日本酒ができるまで
山鶴の日本酒が出来上がるまでの工程をご紹介します。
1. 原料米(げんりょうまい)
お酒の原料はもちろんお米。と言っても通常私たちが食べているお米より粒が大きく、お酒の原料に適したお米を「酒造好適米」と言います。有名なものとしては「山田錦」「五百万石」「美山錦」「雄町」「八反」などがあります。
【山鶴では】
お酒の原料としてもっと安いお米を使う場合もありますが、山鶴は使っているお米の殆どが酒造好適米です。全ては皆様にご満足いただける美味しいお酒を作るためです。
2. 精米(せいまい)
お米の外側にはお酒を作るのに不必要な成分が多いので、その部分を削り取らないといけません。それを精米といいます。
普段皆さんが食べているお米は9%程度を糠として削っています。もとのお米から糠として削り取った残りの割合を精米歩合といいます。つまり皆さんが普段食べているお米は精米歩合約91%ということになります。
精米歩合は、本醸造や純米酒は70%以下、吟醸酒は60%以下、大吟醸酒は50%以下と決められています。
【山鶴では】
全国平均の精米歩合約72%ですが、「山鶴」の平均精米歩合は49.6%。いかに材料を磨くことにこだわっているかおわかりいただけること思います。しかも、純米酒も含めてすべての酒を吟醸酒の規格(使用米三等以上・精米歩合60%以下・低温醗酵)で醸しています。
3. 洗米(せんまい)
精米されたばかりのお米は熱を持っていたりしますので2~4週間ほど置いてから、糠を除くために水で洗います。
洗米されたお米は、浸漬タンクで吸水させます。その日の気温・水温・湿度・お米の精米状態によって、米の吸水量が違いますので、長年の経験から判断され、洗う時間が決められます。
お米を洗ったあとの、水気を飛ばします。この工程は脱水と呼ばれています。
丸い大きなグリーンの機械(遠心分離機)の中に、お米をいれます。
日々、湿度が違いますので、これも長年の勘から時間が判断されます。
4. 蒸米(じょうまい)
お米は生のままでは、澱粉質が分解しにくいので30~60分程蒸して糊化澱粉にします。
お米をむすための機械を甑(こしき)といいます。下から蒸気を入れて蒸していきます。甑の上の布が段々膨らんでいきます。
蒸し器の中のお米は何段か重ねてあるので、段によって、ばらつきが出ないよう、一定に蒸しあがるよう、蒸気圧を調整してゆきます。
蒸米造りが始まり酒米を蒸している時の蔵の風景です。
朝早くからの作業のため蔵見学に来られても観れないのが残念ですが、お天気のいい日は結構遠くからでも見えるみたいです。
そのせいか毎年一度は火事と間違われ消防車が!なんてことも。
5. 放冷(ほうれい)
蒸しあがった米を熱いうちに取り出します。
(蒸し取り作業)
放冷機は3~4m程のベルトコンベアー式になっており、その上に均一に乗せられたお米は、運ばれているうちにさめていきます。
放冷機の温度調整は大変難しく、温度計などは付いてない為放冷機の温度を吸う量と、ベルトコンベアーのスピードを調整しながらの作業になります。
写真は放冷機からお米が出できたものを 均一にしているところです。
6. 製麹(せいきく)
一麹二酛三造りと言われるように、麹造りはお酒を作る上で最も重要で難しい工程です。
製麹冷ましたお米に種麹という麹菌ををふって植えつけた後、麹室(こうじむろ)という30度ほどの暖かい部屋の中に引き込んでの作業です。
「箱麹法」という製法でつくられます。
丹念に100kgずつを手で揉みほぐしていきます。
100kgでも、水洗いで吸水した水の分量をのぞき、約20kgずつ、6枚分、写真のようにのばしていきます。 伸ばしてゆく時、厚さがとても重要で、薄いと、麹の発育が速まってしまいますし、厚すぎると、麹の発育は遅くなってしまいます。均一に、また、適度な厚さでのばしていきます。長年の経験からによる職人技です。 そして、箱のような、機械にいれられます。箱の中は、パネルヒーターになっており、温度を時間ごとに上げていくのですが、均一に温度が行くよう、段を移動したり、調整したりをくりかえし、くりかえし・・・。 こうして、室(むろ)での麹造りがおこなわれます。
7. 出麹(でこうじ)
晴れて麹となって麹室を巣立っていくことを「出麹」とよびます。
写真はあたたかい麹室から出て冷ましているところです。
8. 酒母(しゅぼ)
酒母は別名「酛(もと)」とも呼ばれます。「もと」の名のごとくお酒のもとの酵母を大量培養したもので、水・麹・蒸米を混ぜたところに酵母を加えて培養します。酵母の密度が非常に高い「酒のもと」なのです。酒母には雑菌が繁殖しないように多量の乳酸を含んでいます。 酒母を造る方法には昔ながらの「生酛(きもと)法」と明治42年に開発された「速醸(そくじょう)法」の2つがあります。 生酛法とは、自然に乳酸発酵させてから酵母を増殖させる方法です。 速醸法は、あらかじめ乳酸を添加して酵母を育成する方法で、山鶴では速醸法で酒母を造っています。写真は酛仕込み用のタンクです。
タンクのなかで、酛を仕込んだ時のいちばん最初の段階で「水麹」と呼ばれます。
麹の中に、麹と蒸米をいれて、酛造りをすすめていきます。約30分後の写真です。
4日後のタンクの中の様子です。
9. 本仕込み
本仕込みは醪(もろみ)仕込みとも呼ばれます。 皆さんの中には「三段仕込み」という言葉を聞いた方がいらっしゃるかもしれませんね。日本酒の本仕込みでは、「麹・蒸米・水」の全量を、いっぺんに加えるのではなくて、3回に分けて仕込みます。 1回目を「初添え」、2回目を「仲添え」、3回目を「留添え」と呼びます。また、「初添え」の後は酵母の増殖のために1日休ませます。この休息を「踊り」と呼びます。 酒母を1として、初添えでは2倍の原料、仲添えでは4倍の原料、留添えでは8倍の原料と、倍々に増やして仕込んでいきます。 醪の中では 米のでん粉が麹の力で糖化され、その糖が酵母の力で発酵して、アルコールとなります。アルコール分は約18%もでます。醪の期間は一般的には20日間、吟醸酒だと30~45日にもなります。
初添え
掛米となる蒸米を放冷機に入れていきます。
掛米が放冷機からでてきたところです。
蒸米をとった後、布についたお米、一粒一粒も大切にとっていきます。
掛米を急いで運びます。
その掛米を下で受け取り・・
酒母・水・麹の入れられたタンクの中に掛米をいれます。
掛米をタンクに入れているところです。
掛米がタンクに入っている様子。
タンクの中に掛米が入った状態。
酒母・麹・水・掛米(蒸米)全部がタンクに入ったら、かい入れします。
仲添え
「踊り」の次の日のタンクの中の様子
大ホースにより掛米をタンクに入れていきます。
掛米がタンクに入っていく様子です。
留添え
留添えの後のタンクの様子です。
2日目のタンクの様子です。まだ米の粒々がわかる状態です。
3日目の様子です。
7日目
タンクの近くに寄ると甘ーい香りが漂ってきます。米の粒もだいぶんわからなくなって、全体的にトローっとした感じです。タンクの中にそっと耳を傾けるとプツっ、プツプツっ、って小さな小さな音が聞こえるのです。小さな泡が次から次にぷくぷくとあがって来て、生命を感じます。
10. 圧搾(しぼり)
熟成した醪を圧搾することを「上槽(じょうそう)」・「槽がけ(ふながけ)」といいます。醪のしぼりです。
中本酒造店では、「ヤエガキ式(ヤエガキの吟醸搾り機)」という大袋による、圧搾が行われています。
また最上級のお酒では、醪を入れた木綿袋を一つずつ吊るしてしぼる「滴く取り」というしぼり方も行います。中本酒造店では「滴く取り」は小型の四角いステンレスの容器を使って行っています。
滴く取り(平成21年度、新酒の初揚げの工程です。)
さあ、いよいよモロミの搾りです。まずは、しずくしぼりです。写真は搾る前のもろみです。
ステンレスの槽の中の布袋に、ホースで少しずつモロミを入れていきます。
それぞれの槽がいっぱいになりました。
さあ!でてきました!!でてきました!!まず、「あらばしり」、そして次に出てくるのが「しずくしぼり」。とてもとても希少なお酒です。
お酒の神様に、初揚げを感謝し、醸造安全を祈願しました。
ヤエガキ式(ヤエガキの吟醸搾り機)
濃度が同じになる様にモロミを攪拌しながら
ヤエガキの吟醸搾り機にモロミを入れていきます。
一つ一つの袋からお酒が滴りおちています。蔵中お酒のいい香りが漂います。
11. 滓引き(おりびき)
搾りたてのお酒にはまだ細かい残存物が浮遊していて白濁しています。10日ほどタンク内で静置し、その浮遊物を沈殿させます。この工程を滓引きと言います。
滓引きしたお酒は、上澄みだけをタンクから抜き取ります。タンクの抜き取る口のことを「呑口(のみくち)」と言います。
底に滓が溜まっているので上の口からお酒を抜き取ります。
12. 濾過(ろか)
滓引きが終わり、きれいになったお酒にも、まだ微細な粒子が混じっていますので、さらに濾過します。一般的には活性炭素を使って色や雑味を取り除きます。
濾過の後、通常の蔵でしたら「火入れ」→タンクでの「貯蔵」→「ビン詰め」を行って、商品として出荷されていきます。
中本酒造店では、「火入れ」で品質劣化をより防げる「ビン燗」を採用していますので、濾過の後、「ビン詰め」→「火入れ(ビン燗)」→「ビン貯蔵」の後商品として出荷されていきます。
13. ビン詰め
アルコール度20%前後の原酒に水を加えて(割水)から、ビン詰めしていきます。
ビン詰め、検品を行います。
生酒はこの段階でほぼ完成です。温度管理をした冷蔵庫で貯蔵して出荷の時を待ちます。
14. 火入れ
濾過されたお酒にはまだ酵素が残っているので、その酵素の破壊とその他の殺菌をするために、お酒を60度~65度に加熱します。火入れは通常、蛇管やパネルヒーターを通して熱湯をくぐらせる方法をとりますが、中本酒造店では「ビン燗」といって、ビンに入れたまま、お湯につけて加熱し、予定の温度になったら急冷しています。この方が品質劣化が防げるのです。
純米大吟醸(黒)の1.8Lのビン燗作業の様子です。1.8Lサイズになると、一本一本が重たいので、結構な重労働です。一日で、850本ほどのビン燗をします。夕方終わり頃になると、腕がとってもだる~くなります。
15. 貯蔵
一般の蔵では火入したお酒は、出荷時のビン詰めまで貯蔵タンクで寝かせておきます。15度~20度で管理する蔵が多いのですが、吟醸酒や生酒は2度以下で冷蔵管理します。 中本酒造店ではビン燗で火入しますので、ビンに詰めてからの貯蔵「ビン貯蔵」をしています。しかも温度は火入れ酒で0度~5度、吟醸と生酒はマイナス5度で彫像しています。小さな蔵だからこそできるきめ細かい品質管理なのです。 山鶴はこのような工程で生産されています。小さな蔵だからこそできる品質向上の努力、工夫をしています。そんな山鶴を皆様にもぜひご賞味いただければと思います。